<厚労省>介護福祉士や保育士の資格を統合
◇一本化検討入り 福祉人材の確保に向けて
『厚生労働省は少子高齢化と人口減で人手不足が懸念されている福祉人材の確保に向け、介護福祉士や保育士などの資格を一本化する検討に入った。戦後ベビーブームの「団塊の世代」が全員75歳以上になる2025年以降を見据えた動きで、介護施設と保育施設などを一つにまとめて運営できるようにすることも考えている。近く省内に検討チームを発足させ、利点や課題を整理する。【中島和哉】
【障害のある我が子、私が死んだら…】高齢の親任せ、介護の危機
 厚労省の推計によると、25年に必要とされる介護職員の数は約248万人で、このままでは約33万人不足し、保育士も17年度末には約7万人足りなくなる。 人口減が進む40年には、地方の過疎化が一層深刻化する見通しで、厚労省は介護施設や児童福祉施設などがバラバラに点在している現状では、人手不足で存続できない施設が続出する可能性があるとみている。 ただ、保育士の場合、今後の少子化で大幅に人員を増やせば将来過剰となる。このため、厚労省は介護施設、保育施設、障害者施設を1カ所にまとめられるよう規制を緩和したうえで、介護福祉士や保育士など専門職種で分かれている資格を統合し、1人の職員が子育てから介護サービスまで提供できるようにする仕組みを検討することにした。
 参考にするのが、フィンランドが導入している医療と社会福祉サービスの共通基礎資格(ラヒホイタヤ)だ。ホームヘルパーや准看護婦、保育士、リハビリ助手など計10の中学校卒業レベルの資格を一本化した資格で、福祉や介護に従事する職員を確保する必要性から生まれた。1人で複数の分野を掛け持ちできる職員を福祉の現場に配置し、柔軟に対応できるようにしているという。
 この資格を持っていると、子育てから介護まで幅広い分野で働くことができ、求人も多いため、生涯仕事を続けることができるという。厚労省は同様の仕組みを日本で導入すれば、雇用対策にもつながるとみている。
 問題になるのは、乳幼児の世話と認知症患者も含めた高齢者のケアでは、求められる技術や知識が大きく異なる点だ。すべて1人でこなすには高い能力が求められ、資格の一本化には、人材をどう育成し確保するかという課題が横たわる。介護、福祉の現場からは、資格統合に対する反発もあり、同省は時間をかけて検討することにしている。』
毎日新聞 4月11日(土)

4月11日(土)、毎日新聞に上記のような記事が掲載されました。
保育士と介護福祉士の資格を持っている者としては、複雑な心境です。まず、それぞれの業務の専門性から見ても、上記の内容を含んだ人材養成では、求められること多岐に渡るため、質の高い人材が養成できるとは考えにくいです。養成のための修業年数やカリキュラムや教員の資質を考えてみても、非常にハードルは高いと思います。

人材確保と養成に関しては、現在の仕事に直結していることから、深刻な人材不足は、痛切に感じるところではあるのですが、上記の内容では実際に養成を具体化するのは、かなり困難かと思います。
参考にするフィンランドとでは、国の事情や国民性が明らかに違います。時間をかけた十分な調査と検討が必要かと思われます。

この記事を読んだ時、現在校長をしている吉川福祉専門学校(平成28年新校名)の「motherfood project 世界のおかあさんになろう」と、重ね合わせて見ました。 

「家長制度」がスタンダードな時代、一家のお母さんは、嫁であり妻であり母であり、子育て、舅・姑の世話(認知症・寝たきりの世話・終末期のケア)、健康管理、病気のケア、食事、家事、仕事とすべてを切り盛りしてきました。
高い専門性はなくても、生活に根ざした知恵があり、それなりにケアを実践していました。地域の習わしや生活習慣、今でいう民間療法的な要素が強かったですが、一家からは絶大な信頼を得ていました。
しかし、母親にかかる負担は想像を絶するものであり、世の中のニーズや変化に伴い、社会の一員として、一人の人間として、女性として生き方を考えた時、国の制度やそれぞれの専門家に任せるということが考えられるようになりました。

「核家族化」や「弧家族化」といわれる時代になり、迅速で膨大な情報化時代のもと、多彩な生き方を選択できる時代に、一人の人間が、医療・福祉・教育・療育を担うには限界があります。
少子超高齢社会にとって、介護保険制度・子育て支援制度はまさに画期的な制度になるはずでした。(しかし現実は、構想したように上手くはいきません)

「地域包括ケアシステム構築」の上で、専門性と人材確保は重要なテーマであり、今後も様々な角度からの検討が必要だと思います。